会社の事業承継・廃業FAQ
会社の事業承継・廃業についてよく頂戴する質問
Q.会社を廃業するタイミングは?
A、
1、債務超過となった
債務超過とは、会社の負債総額が資産総額を上回った状態を指します。
会社が債務超過となっても即倒産というわけではありませんが、一旦債務超過となってしまうと、そこから業績を回復させていくのは非常に難しいものです。
債務超過の状態が悪化した後に廃業すると、経営者自身に借金が残ることもありますので、債務超過となったタイミングで、その会社の廃業を決めるというのも選択肢の一つです。
2、後継者不在で経営者が引退したい
事業を承継できる後継者がいない場合、高齢でも体力の続く限り事業を続けていきたいと考える経営者も多いですが、まだ経営者が元気なうちに廃業を選択することをおすすめします。
何人か事業の後継者を想定している場合でも、事業承継することができないと決まったときは、廃業のタイミングです。
3、廃業費用が手元にあるうち・事業が立ちいかず生活資金に手を出す直前
会社の廃業には、資産などの整理費用に加えて手続きに関する費用がかかります。
また、廃業後も経営者とその家族が生活するための資金が必要です。
会社の経営状態が悪化し資金が少なくなったとき、廃業するための費用や生活資金を確保せずに、会社運営に資金を費やしてしまうと、廃業できない、廃業できても生活に困るといった事態に追い込まれます。
そのような事態に陥らないためにも、廃業費用が手元に残っているうちで経営者の生活資金に手を出す前に廃業を決めることをお勧めします。
Q.事業承継のタイミングは?
A、
1、後継者の年齢がまだ若いうちがベター
事業承継の適切なタイミングを図るのは、後継者の年齢がまだ若いうちのほうがよいと考えられます。
一般に後継者は40代がよいと言われていますが、そうなれば事業承継の時期を検討するタイミングはそれより数年早いほうがよいということになります。
会社の経営というのは何の経験や知識もなく始めてもうまくいかないので、事業承継を円滑に行うためにはその数年前から後継者教育を行う必要があります。
その期間も考慮すると、事業承継を考えるタイミングは、後継者が30代後半くらいでも決して早すぎることはないと考えることができます。
後継者が若いうちに事業承継のタイミングを見計らうのは、もし後継者候補が経営者に向いていないことが分かった時にも役立ちます。まだ若いうちなら、早めに経営者を引退して別な職業に就くなど、人生をやり直すチャンスがあります。
2.後継者が順調に育っているとき
親族を後継者候補にする場合、事業承継の何年も前から後継者教育を行うことになり、その成長具合から後継者としての適性や、事業承継を実行するタイミングを探っていくことになります。
後継者が順調に育ち経営を任せられると感じた時は、事業承継のよいタイミングに入っているといえるでしょう。
ただし、この時点でまだ現経営者に気力や体力が十分あり、まだ経営者としてやっていける場合は判断が難しいところでもあります。
現経営者が経営を続けて後継者には事業承継を待ってもらう場合と、早めに現経営者が引退する場合とで、どちらのタイミングがよいかを考えることになります。
どちらがよいかは個々の会社の事情によって違ってくるので、現経営者と後継者がよく話し合ったうえで、最適なタイミングを決めていくことが大切です。
3.後継者に経営者の自覚ができてきたとき
会社の経営者となるには、仕事や経営の能力だけでなく、従業員の生活を守るとともに事業によって社会に貢献するといった、経営者としての自覚を持つことも重要になります。
いくら経営の能力が高くても、経営者としての自覚がない後継者が会社を発展させていくのは難しいでしょう。
しかし、経営者の自覚というのは、人に始めから備わっているものではありません。現在は自覚を持っている経営者も、多くの場合は経営の経験を通して自覚を養っていったはずです。
後継者には後継者教育のなかで、経営者としての自覚を持ってもらうことが重要になり、後継者に自覚がでてきたら事業承継のよいタイミングであるといえます。
Q.会社清算時の法人税と地方税の手続きは?
A、
会社を解散・清算する際には、各事業年度において通常の確定申告を行う必要があります。
その事業年度内に発生した所得金額に対して法人税や地方税がかかり、納税をしなければなりません。
ただし、解散した会社は、事業活動を終了するため、それまでのように売り上げが発生することはありません。
そのため、多額の法人税や地方税が発生することはなく、解散後は毎年赤字になることが多いはずです。
会社が保有する不動産や有価証券を売却したことによって、利益が生じることもありますので、この場合は、その利益に対して法人税や地方税が課されます。
また、債務の方が多くなった場合、債権者に債権放棄してもらうことがあります。
特に、元の代表者に対する借入金であれば、容易に債権放棄してもらうことができます。
しかし、この時会社には債務免除益という利益が発生してしまい、この利益も課税対象となる可能性があります。
繰越欠損金を利用して納税が生じなければ、この段階で法人税や地方税が発生することはありません。
また、過去に期限切れの欠損金がる場合には、その金額を利用することもできます。
必ず税金が発生しないというわけではないので、財産の売却額や債務免除の際の取扱いについては注意が必要です。
Q.会社清算時の消費税は?
A、
清算を行う段階で、会社が保有する不動産を売却すると、消費税が発生するケースがあります。
不動産の中でも、土地の売却であれば消費税は発生しませんが、建物については消費税が発生します。
このことを頭に入れておかないと、株主に分配を行った後、現預金がない状態で消費税の納税が生じることになりかねません。
解散する前に、どのような財産の売却を行う必要があるのか、先に売却できるものはないのかを確認しておく必要があります。
Q.会社清算時の事業税は?
A、
事業税は申告書を提出した日を含む事業年度の損金になります。
そうすると、残余財産確定事業年に生じる事業税は損金算入されるタイミングが失われてしまう為、
残余財産確定最終事業年度において事業税を損金算入させることができます。
また、外形標準対象法人については、解散の日における資本金が1億円を超える場合に適用されます。
この場合、解散後に減資をしたとしても、清算事業年度は外形標準の対象となります。
但し、清算事業年度中は資本割については課せられません。
加えて、残余財産確定した日を含む最終の清算事業年度は、付加価値割、資本割ともに課税されません。
Q.繰越欠損金の取り扱いはどうすればいいのですか?
A、
1、概要
通常の事業年度と同じく繰越欠損金の利用は可能です。
資本金1億円超の会社や資本金5億円以上の完全子会社は繰越欠損金の利用につき
所得金額の50%までの使用制限が生じますが、それも同様です。
解散事業年度、清算事業年度につき特例で制限が生じないということはありません。
債務免除を受ける場合など、多額の利益が出る可能性もありますので、
特に欠損金の制限がある会社は納税も意識しないといけません。
2、残余財産がないと見込まれる場合
清算事業年度については、残余財産がないと見込まれる場合は、期限切れ欠損金を利用することができます。
残余財産がないと見込まれるかどうかは、清算事業年度毎に判定を行う必要があります。
残余財産確定までに時間を要する場合は、複数回申告することが想定されますが、それぞれで判定を行います。
法人税基本通達12-3-8によると、債務超過であれば要件を満たすことになります。
但し、残余財産確定事業年度については債務超過の状態だと通常の清算はできませんので、
純資産が0円の状態であれば、残余財産はないこととなり、期限切れ欠損金を利用できると考えられます。
また、期限切れ欠損金を利用する場合は、残余財産がないと見込まれる書類を申告時に添付する必要があります。
実務上は、資産、負債を時価に修正した実態貸借対照表などを添付します。
時価については、事業年度終了時の処分価格によりますが、
事業譲渡を前提とした解散である場合で継続して他の法人で事業供用される見込みであるときは、
譲渡される場合に通常付される価額によります(法人税基本通達12-3-9)。
3、期限切れ欠損金の計算方法
具体的な期限切れ欠損金の金額は①から②を控除した金額となります。
①適用年度終了の時における前事業年度以前の事業年度から繰り越された欠損金額の合計額
②青色欠損金額又は災害損失欠損金額
上記①は法人税法基本通達12-3-2において、別表5(1)の期首現在利益積立金額の合計額とされています。
期限切れ欠損金は俗称ですので、適用期限を経過した別表7(1)の繰越欠損金ということではなく、
別表5(1)を確認すれば損金可能限度額が分かります。
4、欠損金の繰戻還付
通常は、中小企業者等以外は繰戻還付の適用は停止されていますが、
解散事業年度、清算事業年度に関しては、資本金の大きさに関わらず適用可能です。
5、繰越欠損金の引継
例えば100%子会社など完全支配関係のある会社が清算した場合、
親会社は子会社が使用し切れなかった繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。
その代わり、親会社で子会社株式の清算損失を損金にすることはできません。
清算損失を損金にして繰越欠損金も引き継ぐと、二重で損失を取り込むことになりますので、制限を入れています。
また、繰越欠損金を全額引き継げるのは、支配関係が生じてから5年を経過している場合、
子会社設立から継続して支配関係がある場合などに限られます。
清算する子会社が過去5年以内に買収されたものである場合は、
買収した事業年度以降に生じた欠損金しか引継ぐことができないため注意が必要です。