遺言執行者になったら
遺言書を見たら、自分が「遺言執行者」となっていることもあります。
遺言執行者とは、遺言者の死後に遺言の内容を実現する手続きを行う人物のことです。
遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実現する手続きを行うことができます。遺言執行の手続きには、認知、推定相続人の廃除や取り消し、遺贈、祖先の祭祀(さいし)主宰者の指定、生命保険金の受取人の変更などが含まれます。
慌てずに、以下の手順で遺言執行を進めてください。
遺言書の検認を請求する
遺言書の検認とは、家庭裁判所において、相続人などの立ち会いのもと、遺言書を開封して内容を確認する手続きのことです。
遺言執行の前提として、まずは、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求することが必要です。
なお、公正証書遺言や遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言であれば検認は不要です(弊事務所では、公正証書遺言をおススメしております)。
就職の通知の発送
遺言執行者として、まず、相続人(相続を受ける方々)に対して、就職した旨の連絡文書を通知します。
就職の通知は、法律上要求されているわけではありませんが、相続人等は遺言執行に対して強い利害関係を持っています。また、相続発生後、相続人らが預貯金を解約する等、勝手に遺産を処分するなどのおそれも考えられます。
したがって、相続人らに対して遺言執行者に就職した旨を連絡することは、相続人らの処分行為を防止する上で重要な職務といえます。
遺言書の写しを送付する
遺言執行者は、遺言執行者に就職することを承諾したら、ただちに任務を開始するとともに、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
そこで、上記の就職通知書と併せて遺言書の写しも送付しましょう。
財産目録の作成
遺言執行者は、遺言執行を行う前提として、相続人に誰がいるかを調査し、かつ、対象となる遺産として何があるかを調査しなければなりません。
ここでのポイントは、遺言書に記載されている遺産だけではないということです。
遺言書を作成した後、取得した財産も遺産となりますので、相続人からのヒアリング、預貯金の取引履歴のチェックなどを通して、遺産を調査しなければなりません。
また、民法は、遺言執行者の職務として、「遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」「相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。」と定めています(1011条)。
遺言事項の執行
財産目録の作成後、あるいは作成に並行して、遺言の内容を実現する手続きを進めます。
具体的な手続きは遺言の内容によって異なるので、代表的なものにつきご説明します。
不動産や預金の遺贈
不動産や預金の遺贈
不動産の場合は、法務局に申請をして受遺者に登記を移転します。
また、預金の場合は、受遺者の意向や銀行の対応を考慮しながら、預金を解約して払い戻しを受けて受遺者に引き渡すか、あるいは預金名義を受遺者に変更します。
遺言執行を拒否する方法
遺言執行者として指定されているものの「荷が重い」「仕事が多忙で時間を割けない」などで拒否したい人もいるはずです。
遺言執行者に指定されても就職するかどうかは自由ですので、拒否して問題ありません。拒否したい場合は、相続人にその旨を伝えましょう。伝え方に決まりはないため口頭でも良いのですが、形に残るよう書面がより望ましいといえます。
遺言執行者は第三者に遺言執行を任せることができる
遺言執行者は原則として第三者(専門家)に遺言執行を任せることができます。
一方で、遺言者がその復任を許さない意思を表示していたときは、その限りではありません。